現在の医学で治せるがんの多くは、検診で早期発見できたものに限られています。そのため「がん検診は積極的に受けよう」という姿勢が大切になります。 がんによる死を防ぐ確実な方法は、有効ながん検診を適切に受けることなのです。多くのがんは、相当進行するまでは症状はありません。がん検診への誤解の中で最も多く重要なのが「困ったとき」に受けるというものです。「困ったとき」ではもう遅いのです。
「自分の健康は自分で守る」という自覚はあっても「がん検診を受けるのは、症状が出てからでも間に合う」とか「がん検診を受けるなら、がんが確実に見つかるハイテク検診で」などと考えている人は少なくありません。
このような誤解が、効果のあ� ��がん検診の妨げになっていると言えます。がん検診の対象は「症状がなく健康な人」で、一見健康そうな人が受けてこそ、がん治癒につながる早期がんが見つかるというものです。
生活の中でのがん予防、いわゆる「1次予防」には、数年もの単位の長い時間がかかるでしょうし、1次予防が将来成果をあげたとしてもなお解決できないがんも少なくないでしょう。
がん検診は「2次予防」と言われ、できてしまったがんによる死亡を回避する唯一の手段なのです。しかも、がん死亡の上位を占める主要ながんに対する検診は、確実にがん死のリスクを下げられると科学的に証明されています。
死亡率を下げる効果のあるがん検診� ��は、どんな検診をいうのでしょうか?がん検診への正しい理解が、早すぎる死による損失を防ぎ、日本のがん死亡率の減少にもつながります。
がん死亡率の高さは、がん検診率の低さに起因する
日本のがんによる死亡者数は、年間34万人に上っており、全死亡者の約30%を占めています。その上、先進7ケ国で、がんで亡くなる人が増え続けているのは、現在日本だけなのです。
その大きな「原因は、がん検診率の低さにある」といいます。 がん対策推進協議会の委員で、東大付属病院の放射線科准教授の中川恵一先生によれば、がん受診率の比較(右図)から、乳がんでは英米の70%に対して日本は20%です。子宮頸がんに至っては、米英の80%に対し、日本は21%に過ぎません。
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中川医師は、この圧倒的な受診率の差が、日本のがん死亡者が減らない大きな原因だといいます。がんで死なないためには、早期検診、早期治療が大事です。どんながんでも早期がんのうちに発見できれば、治癒率は格段に上がります。 例えば、早期の大腸がんの場合、ほぼ100%治ると言われています。ところが、進行がんになるとそれが60%に下がり、転移すると10〜20%にまで治癒率は下がってしまいます。
しかし、検診では、がん予防には直接結びつきません。アメリカでは『がん検診によって過剰診断になったり、過剰治療になる場合がある』と指摘されています。過剰ながん検診には注意が必要です。
欧米の先進諸国では、推奨されているがん検診を実施し、受診率を上げるにつれて、がん死亡� �を低下させています。しかし、受診率の20%前後と低い日本では、がん死亡者が今後も増え続けていくとみられています。
集団(対策型)検診とオーダーメイド(任意型)検診
企業の行う集団検診は、企業で働く人が病気になっていないかを検査して、企業と働く人を守ることにあります。また、自治体が行っている集団検診は、全体の死亡率を下げたいのが狙いです。 このような集団検診は、検診費用を安くしたり、無料にするなど政策的に行われますので、有効性が証明された方法に限られた、つまり対策型検診と言えます。
集団検診は、全体の死亡率を下げるのに非常に有効ですが、がんを見つける力はハイテク検査法に比べると劣ります。しかし、がんを見つける感度よりも有効性が証明されていることのほうが重要なのです。
人間ドックなど任意型検診は集団検診とは違い、個人のがんによる死亡リスクを下げるのが目的で、費用は個人負担となります。受診者本人の希望で行われ� �りしますので、有効性が確立されていない検診も選ばれます。
通常、このタイプの検診は、がんを見つける力である感度が優先されるために感度の高い検査方法が選ばれます。任意型検診では、検診の管理体制は施設に依存しているため、質の高い検診もある一方で、その逆もあり得ると考えておくことが大切です。
このように対策型、任意型の2つの検診がありますが、がん対策としては先ず、対策型の集団検診をキチンと受けることをお勧めします。
米国でも、任意型検診をそのまま行うことは問題が多いと考えられており、検診の理想型である組織型検診に近づけていく努力がなされています。
なぜなら、任意型検診では、不利益が最小化されていないので、必ずしも効果が期待できないからです。そ� �以上に質の保証されない検診が混じることがあるからです。
任意型検診では個人の価値観もありますので誤解のないようにするため、医師や検診に携わる医療者は、受診者に対して利益(メリット)と不利益(デメリット)について十分な説明が必要となります。
科学的根拠が十分でない検診では「○○のため、××の不利益があるかも知れません」と不利益を説明し、その上で受診者自身が受けるかどうかを決めるやり方が現在、世界の基準ともなっています。
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